Aではない君と 感想
ある日突然...同級生の殺人容疑で14歳の息子”翼”が逮捕されます。
離婚し新たな人生を歩もうとしていた父と、息子と一緒に暮らしていたけれど忙しい毎日に追われ子供が見えていなかった母。
親である限り、自分の子供が被害者になるだけでなく、加害者になることもあるということを突き付けられました。こんなに苦しくて胸が痛かった本は初めてです。
殺人犯になった息子、殺されてしまった子、その親たち...どの立場に立っても苦しくて。
特に、少しずつ真実が明らかになるにつれて、加害少年のことを想うと...息が出来ないほどの苦しさと胸の痛みに、吐き気すら覚えるほど。
途中、加害少年は「心とからだと、どちらを殺した方が悪いの?」と問いかけます。
私は法治国家に住む大人ですから、頭では「体を殺すことの方が悪い。
何があっても人を殺してはいけない。」と思ってはいます。
でも...心を殺されるような酷い事件をニュースで見て「こんな犯人は死刑になればいい」と本気で思ったりもします。
そして、被害少年が加害少年(翼)にしたことを考えると、思春期の子供ならば加害少年(翼)同様に「なぜあいつを殺したことがいけないのか」と思うかもしれません。
そんな人間の心を本当に上手に描いていると思います。だからこそ引き込まれてしまいます。
子供は思春期に入るといつの間にか親の手を放し、自分自身で歩いていこうとします。
だけど、だからと言って手を放し一人にするのではなく、いつでも守れるよう少し後ろから見守り、どうしようもない時は、すぐに手を握り、一緒に逃げてあげたい。
子供は一人では逃げられないから。だからこそ、加害少年は事件前に父に電話をかけたんだと思います。
"物事のよし悪しとは別に、子供がどうしてそんなことをしたのかを考えるのが親だ"
ついつい、頭ごなしに怒ってしまうこともあるけれど、この大切な言を胸に刻んでおこう。
そうすればきっと、子供が追いつめられる前に、きっと気づいてあげられる。
暗く重い作品だけれど...全ての大人に、そして思春期以降の子に読んでもらいたい1冊でした。(#薬丸岳)