なんだか心に刺さるタイトルです。
受験を控えた中学3年”セキコ”を中心に進んでいく「まともな家の子供はいない」と”セキコ”の同級生を中心に進む「サバイブ」の2話が収録されています。
まともな家の子供はいない 感想
子供と大人の境目にいる主人公達の気持ちは、あの頃自分と一緒だ。
とにかくセキコはイライラしている。
私は大人になった今でもイライラしているけれども(汗)、あの頃のイライラはまた特別だった。
そのイライラは主に大人に向けられる。
なにかこう、大人を汚いと感じる。卑怯だと思う。
自分はあんな風になりたくないって思う。
でもそんな大人の世話にならなければ自分はまだ生きていけない。
中学生だったあの頃はそんな自分にもイライラした。
自分の家にいたくない。居場所がない。だけどお金がない。
子どもって大変だよね。
学校には嫌な奴がいても行かなければならない(と思っている)し、お金を稼ぐことだって難しい。
そして...汚いと思っている大人(親)がいないと生きていけない。
私はもうすっかり大人になって、セキコと違いカフェに行くお金もある。
もし家に帰りたくなければ、どこかに泊まることもできる。
嫌な奴がいても、無理して付き合わない選択が出来る。
仕事が嫌ならば、辞めて他の所を探すことだってできる。
宿題を写さなくたっていい(笑)
あぁ・・・大人って自由だ。
それもこれも、子供の頃に逃げ出せず苦しかったり、無力な自分に絶望して深く悩んだりした...そんな事へのせめてものご褒美なのかもしれない。
そう考えると大人バンザイ。
・・・と、登場人物の子供たちに教えてあげたい。(大人ならではの大変さもあるんだよ、というのを付けくわえて。)
そして、自分の娘もあと数年で思春期に入り、こうした大人に対しての気持ちを持つこともあるだろう。
親を鬱陶しいと思うときもあるだろう。
なんの力もない、お金もない...そんな自分にイラつくこともあるんだろう。
そんな時は、ぶつかりながらもそのイライラを受けとめてあげようと思う。
だけど、自分の家を「居心地が悪い・居場所がない」と我が子が思うようなことは、親としてしたくないと思う。
少し大人に近づいた大学生の沙和子の言葉「長くは続かない」。その短い言葉に凄く救われた気がした。(#津村記久子)