数々の賞を受賞しているノンフィクションライターの石井光太さんが、28歳でバングラディッシュを旅した時の経験を書いたノンフィクション。(本書は電子書籍のみの販売)
発展途上国の話とはいえ、あまりにも壮絶で...途中読み進めるのを躊躇してしまった。
恵まれたこの国で暮らしている私にとっては、とにかく衝撃的な内容だった。
主に、バングラディッシュのストリートチルドレンについて書かれている。貧困国ではよくある問題なのかもしれない。
私もストリートチルドレンの問題は、ドキュメンタリー番組などで見たことがある。
だけど、私はその詳細や実態を知らなかったんだと思い知らされた。
親に捨てられたり、親が亡くなってしまい、ストリートチルドレンになった子供たちは、今日を生きるために数十円で自分を売る。
そしてそれを食い物にする大人がたくさんいる。
1日に何人も客をとったり、その客にひどい目に遭わされたり、行為による痛みを和らげるために薬に溺れる子もいる。
それが、たった7、8歳の子供の日常。
そんな苦しくて辛いであろう現実を、「自分たちにとっては、当たり前の毎日」と思っている子供たちの姿にとても胸が痛んだ。
表紙の写真の女の子は、作中に出てくる女の子。
読む前はきれいな衣装を着ている普通の少女...と思ったが、読み進めることでこの衣装さえ悲しく映った。
現地での、若き著者の行いは決して褒められたものではないし、時にはただの同情で、余計に子供たちを傷つけてしまったりしている。
そんなことも隠さずに書いている。
それを見て「そんな行動は現地の人のためにはならない」と上からコメントすることはいくらでもできる。
ただ、読み終わった後...そんな著者の愚かさや無力さに自分を重ねたりした。
私には、そこに書かれている子供たちの気持ちを本当に分かってあげられるはずもなく、助けてあげることもできないから。
でも、だからこそ知ることが大切だと思う。
自分が生きているこの世界のどこかで、こういうことが行われているということを。(#石井光太)