第9回 女による女のためのRー18文学賞読者賞受賞作。彩瀬まるさんのデビュー作です。
現時点では電子書籍しかありません。(小説新潮2010の6月号に収録されています。)
私はkindleで購入し、スマホのkindleアプリで読みました。短編小説なのですぐに読めます。
花に眩む 感想
登場人物は 3人。主人公 ”はな” と ”しま” ・ ”高臣さん”。
それぞれの肌には、それぞれの花が咲く。
それは美しく華やかなものではなく、とても素朴な花だ。
遺伝子とともに受け継がれるその植物は人間の肉に根を張り、その個体の免疫力を上げて共生し、年月とともに根を深め...やがて心臓に浸食を果たしその個体を殺す。
それは残酷でも物騒なことでもなく、彼女たちの老化であり死なのである。
少し不思議な物語なのだけれど、違和感なく読み進めることが出来る。
そして、少し切なくとても美しい。
肌から生える植物の芽をぷつぷつと抜く描写はとてもリアルで、自分が抜いているような錯覚さえ起こしてしまった。
私も若い頃は、よく自分の腕に生えた毛をぷつぷつと抜いていた。
別に毛が許せなかったわけではなく...ぷつぷつと抜くときの”チクリ”とした痛みが少し心地よかったからだ。
チクリとした痛みは、若かりし頃のわたしに生きていることを改めて感じさせてくれるような気がしていた。
主人公はなが生きている世界でも、今わたしが生きているこの世界でも...
みな、どこか寂しさや満たされないものを抱えて生きている。
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