ワイドショーのコメンテーターなどでも知られている医師、おおたわ史絵さんの著書です。
私はこの世代で医師をしている女性はみな、恵まれた家庭で育ったと勝手に思っていました。(父親は開業医なので、経済的には恵まれているとは思います。)
でも、ネット記事でおおたわ史絵さんの実母が薬物中毒で、とても大変だったことを知りました。
この本は、そんな実母の薬物中毒と闘った壮絶な記録です。
母を捨てるということ 感想
おおたわさんの幼少期のお話は、特に苦しくなります。
幼いおおたわさんに母親が行っていたことは立派な虐待だと思いますが、本人は「よそのお母さんを知らなかったから、虐待だとは思っていなかった」と書かれていました。
そういうものなのか...と驚くと同時に、いかに子供にとって「自分の親」や「自分の家庭」が世界の全てで、大切なのかを思い知らされました。
そして、おおたわさんの母親は「オピオイド」という鎮痛剤の薬物中毒になります。
オピオイドとは、合法の麻薬性鎮痛薬。
とても強い鎮痛作用があり、手術後の痛みや末期がんの痛みなどに使用されます。
この薬物中毒になってしまったのは、父親が医師だったため容易に処方してしまったことがとても大きい理由だったと思います。
配偶者が目の前で「痛い、痛い」と言っているのを見るのが辛く、常用させてしまったのだと思いますが...医師という仕事柄、忙しさに追われて妻とちゃんと向き合えなかった(向き合わなかった)のが最大の過ちなのかなと思います。
全てのエピソードがとにかく衝撃的で、母親は薬物依存から買い物依存症になっていくのですが、そのエピソードも普通の人には理解不能。(父親が危篤の時も付き添わず、TVショッピングに勤しむなど...)
ただ、そんなすべてのエピソードが依存症という病の恐ろしさを物語っていると思いました。
最近では「依存症は病気」ということが広く知られるようになりました。
それでも私は心のどこかで「とはいえ、心の弱さもあるのでは?」と思っていました。
でも、この本を読んで依存症になる人は他の精神疾患や病気を抱えていることも多く、やはり「心の弱さ」や「甘え」ではなく「病気」なんだなと再認識しました。(後半部分は、依存症とは何かとか依存症との向き合い方が書かれています。)
おおたわさんが早く死んでほしいと心から願った母もまた、心に傷がありました。
負の連鎖にならぬよう、おおたわさんがしっかりと生きてきたことは本当に素晴らしいことだと思います。
壮絶な過去を赤裸々に、本当に赤裸々に描かれている本でした。(#おおたわ史絵)
(#おおたわ史絵)