わたし、シーズン2

読書が趣味の40代主婦。きままな読書感想文を中心に日常を綴っています。家族は、夫と娘と元保護犬の愛犬ミィ。

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読書感想文-小説

『ファザーファッカー』少女の生き抜く力に圧倒される自伝的小説

第110回直木賞候補作品です。 私にとって初の内田春菊作品。 内田春菊さんの顔も名前も知っていたけれど...今まで読む機会がありませんでした。 しかし内田春菊さんが昨年5月の『ネコメンタリー 猫も、杓子(しゃくし)も』に出演しているのを見て、春菊さんに…

『ハグとナガラ』どこでもいい。いつでもいい。 一緒に行こう。旅に出よう!

ほかの短編集に収録されていた作品や、文芸誌で発表されたものをひとつにした文庫オリジナルの全6話の短編連作集です。(第一話の「旅をあきらめた友と、その母への手紙」は『さいはての彼女』に収録されています。) 解説は阿川佐和子さん。 旅を舞台にした…

『主婦病』夫婦や家庭の中に潜む孤独と闇

本屋さんで、タイトルがなんとな~く目に留まり購入。 収録されている「まばたきがスイッチ」は、第12回女による女のためのR-18文学賞読者賞受賞作品です。(故に性表現が多めです。) 主婦病 感想 ”主婦”が主人公の6話連作短編集。 タイトル買いしたので、主…

『母影(おもかげ)』私は少女を抱きしめてあげたい

「母影」と書いて”おもかげ”と読みます。 ロックバンド「クリープハイプ」のヴォーカル&ギターの尾崎世界観さんの4年半ぶり、初の純文学作品。第164回 芥川賞候補作です。 母影(おもかげ)感想 小学生の女の子の目線で物語は進んでいきます。 シングルマザ…

『 噛みあわない会話と、ある過去について』胸がざわざわする心理的ホラー

噛みあわない会話と、ある過去について 感想 4話からなる短編集。 誰だって1つや2つあるであろう「現実と記憶の相違」。 それが自分の中だけでのことならば、さほど問題でないけれど...相手がいることだったら、こんな感じになっちゃうよなぁ...という感じ。…

『一度だけ』変わらない日常の中にあるモヤモヤと小さな希望

一度だけ 感想 益田ミリさんといえば「すーちゃんシリーズ」やエッセイ、というイメージが強いですがこの本は小説です。 益田ミリさんは女子のあるあるや、心の奥にあるちょっぴりダークなつぶやきを表現するのがとても上手だなぁと思っているのですが、それ…

『1ミリの後悔もない、はずがない』私にとって間違いなく心に残る1冊

五編の作品による連作短編。 1話目の物語「西国疾走少女」は、2016年に第15回女による女のためのRー18文学賞読者賞受賞作です。 故に性描写が多めになっています...が、決してエロ”とは言ってほしくない。生々しくリアルなのですが、なぜか切ないそれなので…

『あのひとは蜘蛛を潰せない』人の弱さもずるさも優しさも、余さず掬う物語

あのひとは蜘蛛を潰せない 感想 登場人物は不器用な人たち。 ...でも、生きるのに不器用じゃない人ってどれくらいいるんだろう。 そう考えると、登場人物はみな「普通の人」。 大きく大きく括ると恋愛小説になるのかもしれないけれど、主人公の根本にあるの…

『ビタミンF』「F」がキーワードの7つの家族の物語

第124回(2000年)直木賞受賞作です。 2002年にNHKBSにてドラマ化もされたそうです。 (Wikipediaでキャストを見てみましたが、原作のイメージに合うキャストだと思いました。) ビタミンF 感想 「炭水化物やタンパク質やカルシウムのような小説があるのな…

『殺した夫が帰ってきました』夫がいるすべての人がタイトル買いしたくなる!?読後少し切ないミステリー

夫を殺したいと思ったことはありますか? ちなみに私は...もちろんありませんw しかし、完全なタイトル買いです。 夫と一緒に本屋さんへ行った時に買いました。うふふ。 殺した夫が帰ってきました 感想 暴力的だった夫をつい殺してしまった...。 そして5年…

『四十九日のレシピ』再生へ向かうまでの四十九日間

四十九日のレシピ 感想 子供がいない主人公の百合子、そして子供を産まなかった継母の乙美を中心に物語は進んでいきます。 途中、百合子を想うと苦しくて悲しくなります。 でも「百合子」を支える人達が、凄く優しく温かいことに救われます。 私もそうだった…

『ワーカーズ・ダイジェスト』淡々と繰り返される日々の中で”働く”を考える

ワーカーズ・ダイジェスト 感想 偶然、しかも仕事で会っただけの男女のお話。 津村さんの書くお話は、特にドキドキするような展開もなく、ただ日常を切り取ったようなお話が多いんだけれども、どの作品も心をガッチリと掴まれてしまう。 それはきっと... 毎…

『ランチのアッコちゃん』おいしいものを誰かと食べる幸せ

重たい本を読んだ後に読みたい1冊。 読むほどに心が弾んでくる魔法の四編。 読むとどんどん元気が出るビタミン小説です。 ランチのアッコちゃん 感想 出てくる食べ物がとってもおいしそう。 料理があまり得意ではない私は、毎日こんなお弁当食べたいな~っと…

『花宵道中』情景や着物の柄さえも...ふわぁ~っと浮かぶような見事な描写

第5回女による女のためのR-18文学賞で大賞と読者賞を受賞した作品です。 江戸は吉原での遊女のお話。 安達祐実さん主演で映画化されています。 // リンク 花宵道中 感想 花魁のお話なので作中に性描写があるので、好き嫌いは分かれるかもしれませんが、女性…

『ペンギン・ハイウェイ』大人になってから振り返ると、なんか...子供って素敵よね

第31回日本SF大賞受賞作。 冒険と驚きに満ちた長編小説です。 ペンギン・ハイウェイ 感想 小学校4年生のアオヤマ君が主人公。 さわやかな季節に読んでほしい、ファンタジーな世界です。 自分の乏しい想像力をフルに使って読みました。 探検をする道のりなど…

『乳と卵』母親が「女」になること...それはそれは恐怖で悍ましい

姉とその娘が大阪からやってきた。 三十九歳の姉は豊胸手術を目論んでいる。姪は言葉を発しない。 そして三人の不可思議な夏の三日間が過ぎてゆく。第138回芥川賞受賞作。 乳と卵 感想 独身の"私"と母である巻子、その娘で、思春期まっただ中の緑子の3人の物…

『桜の下で待っている』面倒だけど愛おしい「ふるさと」をめぐる物語

郡山、仙台、花巻…桜前線が日本列島を北上する4月、新幹線で北へ向かう男女5人の物語。 特に何かが起こるわけでもないが、彩瀬まるさんらしい美しい物語だった。ぜひ春に読んでほしい1冊です。 桜の下で待っている 感想 出てくる町は行ったことのない町ばか…

『家族の言い訳』言い訳をいちばん必要とするのは家族です

私もいい大人になり、自分の家族を持っということを経て、最近なんとなく「家族」というものが分かってきた...かな? そんなタイミングでこの本に出会えてよかった、そう思いました。 『ホタルの熱』『おかあちゃんの口紅』はラジオドラマや入試問題にもなっ…

『まともな家の子供はいない』主人公たちの気持ちは、あのころの私の気持ち

なんだか心に刺さるタイトルです。 受験を控えた中学3年”セキコ”を中心に進んでいく「まともな家の子供はいない」と”セキコ”の同級生を中心に進む「サバイブ」の2話が収録されています。 まともな家の子供はいない 感想 子供と大人の境目にいる主人公達の気…

『骨を彩る』その闇や悲しみさえも、自分

タイトルと装画に惹かれました。 凄く凄くよかったです。何度も読みたいです。 初めて彩瀬まるさんを読みましたが、表現がとても豊かで私の好みでした。 骨を彩る 感想 連作短編集で、登場人物がリンクします。それがまた非常に胸に刺さります。 誰もが心の…

『推し、燃ゆ』推しがいない私さえ一瞬で物語へ引きずり込んでいった

第164回芥川賞受賞作。(2021年本屋大賞ノミネート作品) どこの本屋さんでも品切れで、手に入れるのに苦労しました。 推し、燃ゆ 感想 私は、40年近いこの人生で一度も「推し」がいたことはない。 いいな~と思う俳優や歌手がいても「いいな~」止まり。 ファ…

『人間失格』私は彼を「人間失格」だと言い切ってしまえない

「恥の多い生涯を送って来ました」 この1文から始まる、”太宰治の自伝”や"遺書"とも言われている代表作。 本当の自分を誰にもさらけ出す事の出来ない主人公、大庭葉蔵の手記です。 人間失格 感想 私の正直な感想としては、「共感」はできなかった。 でも、彼…

『密話』悲しいではなく哀しい物語

『日本児童文学』に連載されていたものに加筆修正して書籍化したものです。 連載時のタイトルは「わたしと友だちになってはいけない」だそうですが、これがまたピタリとハマります。 児童書というカテゴリーのようですが、大人が読んでも面白いと思います。…

『頭のうちどころが悪かった熊の話』シュールでスパイシーな大人の寓話集

表紙買いした1冊。2007年に買って何回も読んでいる本です。 不思議なことに、読む時の自分の状況とかで感じ方が変わります。動物が主人公の7つの短編集です。 頭のうちどころが悪かった熊の話 感想 シュールな大人の童話という感じ。 表紙の絵がかわいいのも…

『ノルウェイの森』人の温もりを感じる事は自分が「生きてる」ってことをより感じるのかもしれない

1987年9月、書き下ろし作品として刊行されたそうなので、もう30年以上前の作品なんですね。 寝る前にベッドで読みましたが、上下巻で10日くらいかかりました。 ノルウェイの森 感想 読んだ感想としては、正直.....しんどかった! ”読む”のがしんどかった訳じ…

『爪と目』"あなた"がネットの世界にのめりこんでいく様子がリアル

第149回芥川賞受賞作です。 独自の視点へのアプローチで、読み手を戦慄させるホラー作品です。 爪と目 感想 ......なんだろう。読み終わった後のこの感じ。 私の勝手な想像で子供が虐待されるのかと思っていたのですが、違っていました。 2人称は、違和感も…

『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』手放しでオススメできる私のお気に入りの1冊です

小学校1年生の”かのこちゃん”と猫のマドレーヌ夫人が主人公の物語です。 意味で凄く裏切られた作品です。 クスッと笑ってウルッと泣けるハッピー物語。 子供から大人まで楽しめる作品です。 かのこちゃんとマドレーヌ夫人 感想 とにかく登場人物が全員優しく…

『夫のちんぽが入らない』暗闇から抜け出そうともがき苦しむことも「生きる」ということ

驚きのタイトルですよね。独特なネーミングセンスだと思います。 ただ、そのおセンスのおかげで、年頃の娘がいる我が家の本棚には並べる事が出来ず、電子書籍にて購入しました。 夫のちんぽが入らない 感想 夫のちんぽが入らないのは、この夫婦にとっての1つ…

『Aではない君と』心とからだとどちらを殺したほうが悪いの?

Aではない君と 感想 ある日突然...同級生の殺人容疑で14歳の息子”翼”が逮捕されます。 離婚し新たな人生を歩もうとしていた父と、息子と一緒に暮らしていたけれど忙しい毎日に追われ子供が見えていなかった母。 親である限り、自分の子供が被害者になるだけ…

『蜘蛛の糸・地獄変』どうせ生きているからには、苦しいのはあたり前だと思え

表紙とお値段に惹かれて買いました。 あと、日本を代表する文豪の作品に触れたかったのもあります。『蜘蛛の糸』『地獄変』を含む計8編が収録されています。 蜘蛛の糸・地獄変 感想 太宰治や江戸川乱歩も、私の中では(いい意味で)変態だと思いますが、芥川…