五編の作品による連作短編。
1話目の物語「西国疾走少女」は、2016年に第15回女による女のためのRー18文学賞読者賞受賞作です。
故に性描写が多めになっています...が、決してエロ”とは言ってほしくない。生々しくリアルなのですが、なぜか切ないそれなのです。
『1ミリの後悔もない、はずがない』感想
主人公の少女と、その想い人を軸に時間が進み、様々な人の視点で語られる連作短編。
とにかく冒頭で心をつかまれる。なんなんだ、この人は。作者に対して素直にそう思った。
そして、読み進めている間に何度も思う「本当になんなんだ、この人は。」と。
1話目、頭の中に再生される映像はモノクロだった。
心がギューっとなる。
それは甘酸っぱい恋心...だけでなく、私が思春期に大人に対して感じた感情や想いを大人になった私に、とてもストレートに投げつけられたような気がしたから。
とにかくズキズキとした痛みを感じる作品だった。
それは、まるでアスファルトでこけて擦りむいた傷の痛み。
でこぼこしたアスファルトで削られてギザギザになったその膝は、いつまでもズキズキと痛む。
しかし、読み終わるとちゃんとその傷はかさぶたになっている。
ラストは何とも言えない切ない気持ちと、大人なんて一切信じないと決めた少女にも信じられる大人がいた安堵で、気づいたらページが滲んでいた。
昔少女だった、今を生きる大人の女性に全力でおすすめしたい1冊。(#一木けい)
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