郡山、仙台、花巻…桜前線が日本列島を北上する4月、新幹線で北へ向かう男女5人の物語。
特に何かが起こるわけでもないが、彩瀬まるさんらしい美しい物語だった。ぜひ春に読んでほしい1冊です。
桜の下で待っている 感想
出てくる町は行ったことのない町ばかりだったが、その風景が目に浮かぶ。
まるで自分も新幹線に乗っているかのうような気さえするほど。
5つの物語全てにモチーフとなる花が出てくるが、どの花も主張するわけでなくそっと寄り添ってくれるような存在で、その花それぞれが物語とぴったりと合っている。
5人それぞれに「ふるさと」について思いを馳せる。
それは同時に「家族」に対する感情と向き合うことでもある。
祖母に会いに行ったり、婚約者の親族に会いに行ったり、法事に行ったり、結婚式に行ったり...ふるさとに帰る理由は様々で、その心中も様々。
「ふるさとって素敵ですよ」
「ふるさとを大切にしましょうよ」
などという、押しつけがましい居心地の悪さがないのが、とても心地いい。
ふるさとは誰にとっても温かく心地のいい場所、ではないのだ。むしろ、めんどくさくほろ苦い場所の方がしっくりくる。
自分も家族も街並みも変わってゆく。だけど「ふるさと」はずっと"そこ"にある。だからこそ愛おしい。
(#彩瀬まる)
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