「恥の多い生涯を送って来ました」
この1文から始まる、”太宰治の自伝”や"遺書"とも言われている代表作。
本当の自分を誰にもさらけ出す事の出来ない主人公、大庭葉蔵の手記です。
人間失格 感想
私の正直な感想としては、「共感」はできなかった。
でも、彼の感じる哀しさは分からないでもない...といった感じでしょうか。
人間が、ボタンの掛け違いでゴロゴロと転がり落ちていく様が描かれています。
でもそれだけではなく、上手に生きられない苦しみや、他者と違う自分に対しての絶望、汚い大人たちに対する不信感...主人公は孤独だったんだと思います。
共感できなかったと書きましたが、正確に言うと「今の私には」共感できなかった。
もしも私が10代だったならば、全く違った感想になったかもしれません。
葉蔵の気持ちが痛いほど分かる、と思ったかもしれません。
私も、いつも大人の顔色を窺うような子でした。
それは、とても無力だから。
結局は自分が「嫌だ」とか「汚らわしい」と思った大人に、生活させてもらうしかないですから。
葉蔵のように自分の弱さを自覚し、人間のエゴを真摯に受け止める人の方がきっと少なくて、世の中というものはそんなものには、あえて目もくれないのかもしれません。
だからこそ、繊細で自分の弱さや未熟さ、自分の闇の部分、生きづらさのようなものと向き合い続ける(向き合うが故に堕ちていってしまう)彼を「人間失格」だと、私は言い切ってしまえない...そんな風に想いました。(#太宰治)
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