『ゲゲゲの鬼太郎』でおなじみ、水木しげるさんの戦争体験に関するマンガ短編集です。
ゲゲゲの鬼太郎はもちろん知っているし、子供の頃にTVで見たこともあります。
水木さんが戦地で腕を失ったことも知っていました。
だけど、水木さんが戦争に関する本をたくさん出していたのは知りませんでした。
水木しげるの戦場 感想
巻末の解説に「本書に収められたマンガは水木さんの実体験と、後に読んだ書物の知識、そして水木さん独自の脚色の融合物と解さなければならない」と書かれています。
そのことから「書かれているエピソードが全て実体験の事実」という訳ではないと思うのですが...
それでも実際に戦地で戦った水木しげるさんだからこそ、書けた漫画だと思いました。
軍隊での出来事や戦地での様子、腕を失ったときのことなどが、水木さんらしいタッチで描かれています。(このあたりの事は実体験を描いていると思います。)
戦争とは、自国も相手国も「自分こそが正義」だと信じ、たくさんの犠牲と命を懸けて戦っているわけですから、「戦争」を歴史教育として教えるのはとても難しいと思います。
戦後70年以上経った現在でも、慰安婦問題や歴史教科書の内容、某神社へのお参りなどについて揉めているわけですから。
「全員にとっての真実」というのはやはり難しく...どうしても、自分たちの国は間違っていなかったと信じたいから自国目線になってしまいます。
そんなこともあり、すっかり平和ボケしている私は、戦争を知ることや語ることは、どこか「めんどくさいこと」だと思ってしまっていたかもしれません。
でも、本書を読んで改めて戦争は本当に怖いことだと、もう二度と戦争なんてしてはいけないと、心から思いました。
戦争は、人の肉体だけでなく精神や心も殺してしまうから。
私の祖母は大正生まれなのですが(認知症ですが、今も存命)元気な頃はよく戦争の話をしてくれました。
祖母は田舎に住んでいたので空襲は免れたのですが、空襲の数日後に勤務先の様子を見るため町へ行くと、そこら中に遺体があり、辺りは独特のにおいがしたこと...
広島に落とされた原爆のきのこ雲を見たこと...
実際に経験した人からの話は本当にリアルで、恐ろしいものでした。
今ではもう戦争を経験した人たちが少なくなってしまっています。
「真実」を追い求めることだけが「戦争を知る」ということではありません。
戦争を経験した人の話に耳を傾け、想いを知ること。
そして、戦地で散っていった方たちがもし、自分の大切な人だったら...と思いを馳せること。
それも大切な「戦争を知る」ことだと思います。(#水木しげる)