先日銀行に行った時に、指名手配犯がたくさん載っているポスターを見ました。
罪名は「強盗」「殺人」「強盗殺人」...などなど凶悪犯ばかり。
そのポスターを見ながら「もし、自分や家族がこのような犯罪に巻き込まれたらどうしよう...」と怖くなりました。
そう、いつも想像するのは”被害者”になること。
自分や自分の家族が加害者になるなんてことは、考えることはありません。
そんなことを思っているときに、本屋さんでタイトルに惹かれて買いました。
買う前は、事件の加害者の親の手記だと思っていたのですが...
実際は日本で初めて加害者家族支援のNPO法人を立ち上げた著者による「加害者家族の実態」です。
息子が人を殺しました 感想
ニュースで毎日のように目にする重大事件。
事件が酷いほど、その加害者の人格が異常なほど...
その加害者の親はどんな人間なのか?どんな教育をしたらこんな子供に育つのか?と思ったことはありませんか?
私はいつも思います。
そして、やはり家族(ほとんどの場合は親)や、生育状況に問題があるケースも多いため、私は加害者家族に世間の目が向くのは、ある程度しょうがないと思っています。(とはいえ、誹謗中傷してもいいとは思っていません。)
しかし、その加害者家族がどうのような生活を送っているかなどは考えたことはありませんでした。
本書には、そのような加害者家族の事例がいくつも載っています。
現在ではインターネットの発達により、簡単に加害者家族の情報が拡散されてしまいます。
その中には本当のこともあれば、全くのデマもあるでしょう。
でも、事件が酷いほどその情報は拡散され「加害者家族も加害者の一部」のような感覚になってしまいます。
でも、加害者家族は「加害者」ではないんですよね。
特にかわいそうだと思ったのは、加害者の子供や兄弟。
家族が起こした事件を境に、本当に人生が一変してしまい...通っていた学校にも通えなくなり、将来の夢や希望も全て奪われてしまいます。
本書には載っていませんが...秋葉原無差別殺傷事件の犯人、加藤智大の弟さんが自殺したことは胸が痛みました。
職を追われ、家を追われ、婚約者の親に結婚を反対され別れ...そして自殺。
自分が知らないだけで、こういうことはたくさん起こっているのかもしれないなと思いました。
そして、私がハッとさせられたことは、加害者家族への誹謗中傷や社会的制裁は、犯罪抑止にはつながらないということ。
「普通の家庭」で育っていれば「家族に迷惑をかけるから」というのが最大の犯罪抑止力につながるかもしれません。
でも、実際に犯罪を犯してしまう人たちが育ったのは「機能不全家族」であることが多い。
だから、自分が捕まった後に家族がどのような目に遭おうとも関係ない、と思っている加害者も少なくないそうです。
機能不全家族とは、家庭内で弱い立場にある人に対して、身体的または精神的ダメージを与える機会が日常的に存在している家族状態のことをいいます。(例えば、虐待やネグレクト、家族同士の不仲による対立や生活貧困、子どもに対する過剰な期待など。)
家族は当たり前に仲が良く、強い絆で結ばれている...というのは全然当たり前ではなくて、悲しいけれど無条件に子供を愛せる親ばかりではありません。
虐待などから子供たちを守っていくためにも、事件の犠牲を無駄にしないためにも...
加害者家族をただ責めるのではなく、その事例をしっかり検証し、事件の加害者はどのような家庭で育ち、親はどのように育てたのか、そこにどのような問題点があったのかをちゃんと見つけ出し、再発防止にしっかりと役立てて欲しいと心から思います。
本書を読み、著者が行っているような「加害者家族の支援」という活動は大切なことだとは思いました。
ただ...私はどうしても被害者側を1番に考えるし、今後もきっとそうだと思います。
日本では被害者や被害者家族に対しての支援さえも全然不十分だと思います。
まずは、もっともっとしっかりと被害者(被害者家族)への支援・凶悪事件の厳罰化をしっかりとして欲しいなと思います。(#阿部恭子)
▼著者が代表を務めるWorldOpenHeart▼