テレビのコメンテーターでもおなじみの医師、おおたわ史絵さん。
華やかな女性医師...きっと多くの方が彼女に抱いているであろう印象。
例にもれず私もそう思っていました。
しかし『母を捨てるということ』で彼女の過去を知り、彼女に対する印象がガラッと変わることになります。
お母さんが薬物中毒だったことを綴った『母を捨てるということ』を読んで、彼女の苦悩を初めて知りました。
プリズン・ドクター感想
職業:法務省矯正局医師
そんな帯を見て「なんで刑務所...?」と思い、手に取ったのがこの本との出会いである。
本書の最初の章には、医師人生を振り返りつつなぜ刑務所で働くことになったのか書かれているが、本当にひょんなことから。
でも「自分はどうして医師になったのか、残りの人生何が出来るのか」という自問自答の中で偶然この仕事に出会い、薬物中毒で繰り返し刑務所に戻ってきてしまう受刑者に母親を重ね、そういう人たちと医者として関わっていくことができれば、母親の問題を抱えながら医者を辞めずに続けてきたことにとても意味があると感じていく。
私も読みながら、この方の天職なのではないかと勝手ながら思う。
罪人なんだから、医療なんて受けるな!図々しい!
もし私や家族が犯罪被害者だったら、間違いなくそう思うと思う。
おおたわ先生も、確かに被害者の気持ち気持ちを考えたら耐え難い気持ちになる、とした上で
「現代の刑務所は罪人を閉じ込めて懲らしめるところではなく、犯した罪に対して懲役という労働をするところなのである。(中略)もし病気が悪化して寝たきりになったら、働けないどころか医療費も生活費も税金から賄うことになるでしょう?それじゃ余計に国民のお荷物になってしまうではないか。」
と書かれている。そっかー・・・確かに。
死刑や無期懲役などの受刑者より窃盗や薬物など、また社会に出てくる受刑者の方が圧倒的に多いわけで。
そんな受刑者の病気を刑務所で放置したことで、悪化したまま出所してしまえば、結局シャバでもっと高額な医療費を使うことになるかもしれない。
そう考えると、受刑者の最低限の心身の健康の管理を刑務所内でせするというのは、結局回りまわって世の中のためになる...のかもしれない。
あと...ケーキの切れない非行少年たちにも書かれていたけれど、境界知能や精神疾患・発達障害に虐待...犯罪を犯す人がすべてそうだという訳ではないけれど、犯罪とは切っても切れない問題だと思う。
どうしても差別!と騒ぐ層がいるのでタブー視されているが、こういった問題をもっとオープンにして社会全体で考えないといけないのではないかなと思った。
多くの人が知ることのない刑務所でのエピソードの他、彼女の新しい取り組みなどがとても読みやすく書かれている。
たくさんの方の目に留まればいいな...と思う良書だった。(#おおたわ史絵)