噛みあわない会話と、ある過去について 感想
4話からなる短編集。
誰だって1つや2つあるであろう「現実と記憶の相違」。
それが自分の中だけでのことならば、さほど問題でないけれど...相手がいることだったら、こんな感じになっちゃうよなぁ...という感じ。
多くの人は、後に「答え合わせ」をしないから実際にこのようなことが出来事として起こらないけれど、この本を読むことで過去の自分の言動を強制的に思い返さなければいけなくなります。
私自身、小学校の頃の同級生と話す機会などがあると、一人一人の記憶力の差にとても驚くことがあります。
私は学生時代の事はあまり覚えていないんだけれど、中には小学校時代の小さな出来事の詳細やその時の会話なども覚えている子もいて。
別になんてことないことでも「あの時、スティンキーちゃんってこう言ってたよね」とか言われると正直、恐怖でしかない。怖っ!って思ってしまう。
だって、それが真実かどうかなんて分からないから。
だからこの本の中の出来事も、でも責めてる側が言ってることが本当に全部正しいのか?とも思いました。
まさにそれが、この本の怖さ。
「起こった出来事」は皆同じだとしても、受け取り方や解釈・感情って本当に人それぞれ。
だからこそ、意図せず(悪意なく)人を傷つけたり、自分もそれで傷ついたりするのはある程度はしょうがない....と私は思っても、みんながそう思えるわけではないのよね。
例え悪意のない言動だとしても、人の恨みを買うことだってある。
人間関係って本当に難しい。口は災いの元だよなぁ。
あなたの過去は大丈夫ですか...?
と問われているような作品でした。
(#辻村深月)