Kindle Unlimitedで読んだコミックエッセイです。『家族がいなくなった日 ある犯罪被害者家族の記録』と、続編の『家族がいなくなって私はうつになった』の2冊を読みました。
ある日突然、犯罪被害者遺族になった著者。
その苦しさや苦悩が、包み隠さず描かれています。
Amazonのレビューにも「絵がちょっと...」とあるし、まぁ私もちょっと思いましたが、でもご本人が書くことにとても意味があると私は思うので、これでいいんだと思います。
『家族がいなくなった日 ある犯罪被害者家族の記録』 『家族がいなくなって私はうつになった』感想
著者の母親が再婚し、義父(母の再婚相手)と子供3人で仲良く暮らしていた中、母親が急逝してしまう。
その後、残された子供3人は義父と養子縁組をし、今まで通り暮らしていた。
その事実だけで、義父がとても誠実で子供たちを大切に想っていたのよくわかる。(作中でも書かれているが、子供たちも義父をとても慕っていた。)
私自身も義父(母の再婚相手)がいたが、そもそも親が再婚することが嫌だったし、義父のことを到底「父親」だなんて思えなかった。
だから、本当にこの義父と子供たちはいい関係だったんだと思うし、義父の素敵な人柄がうかがえる。
そんな義父が殺人事件に巻き込まれ...ある日突然、著者は犯罪被害者遺族になる。
事件のこと、犯人のこと、犯人の親のこと、刑事さんのこと、カウンセラーさんのこと、兄弟のこと、勤めていた会社のこと...、著者の気持ちを正直に描いている。
特に、ご自身が少しずつ壊れていく様子がとてもリアル。
子供3人のうち著者だけが、当時義父と一緒にくらしていたのもあり、事件後著者はPTSDを発症してしまう。
受け入れられない出来事が起こった時に、人はこんな風になってしまうのか...と、とても苦しくなった。
それまで仕事も大好きで、充実した普通の日常が送れていたのに、自分勝手な犯人のせいでその日を境に日常を破壊されてしまう。
どこに何をぶつけても、裁判でどんな判決が出ようとも、もう事件以前の生活には絶対に戻れない。こんな理不尽なことってないよな...と思う。
続編の『家族がいなくなって私はうつになった』では、PTSD・うつになっていく様子が前作よりリアルに描かれている。
「周りがよくなってきた、元気になったと思う時が、実は危ない」と聞いたことがあるが、その通りの様子が描かれて、あぁこのようになるんだ...と初めて知った。
著者の場合は、理解者や支えてくれる友人が近くにいてくれて本当によかったと思うが、そうでない場合、うつは1人で克服するのは難しい病だと思った。
大きな事件が起こっても、私はニュースでその表面を知るだけだ。
酷い事件であればあるほど、無関係の私でさえふつふつと怒りの感情を持つ...が、時間と共に忘れてしまう。
「被害者に命の別状はありませんでした」と聞くと安堵するが、命が助かっただけで、実際は寝たきりになってしまったり、大きな障害が残ってしまうことだって多い。
犯罪は、被害者自身の人生を奪ったり傷つけるのはもちろんだが、同時に著者のような犯罪被害者遺族がいて、事件の日を境に人生が一変してしまう人たちがいる。
現在の日本では自分勝手な強盗殺人の罪を犯しても、殺したのが1人だと多くの場合死刑にもならない。
もし、自分が犯罪被害者遺族だったら絶対に絶対に納得できないよな。こんなんで本当にいいのか?と思ってしまう。
昨今では「闇バイト」などで強盗に入り、簡単に人を傷つける事件が多い。
TVでは、応募と同時に身分証を抑えられたり、「ここで抜けたらお前の家族がどうなっても知らないぞ」と脅されて抜けれなくなるという。
いやいや、自分の家族のことを考えることが出来るなら、被害者や被害者の家族のことも考えろや!と思うが...「闇バイト」に応募するような人間は圧倒的な”想像力の欠如”があるんだろうな、となんとも言えない気持ちになる。
こうやって感想を書いている私自身も、明日突然事件に巻き込まれたり、家族が殺されてしまうかもしれない。
そうやって多くの人が自分事に考えて、犯罪の被害者・被害者遺族のことを知ることも大切だと思う。
辛い体験を描いてくれた著者に敬意を表するとともに、もっともっと被害者側に寄り添った司法になってくれることを心から願う。
(#今田たま)