「母影」と書いて”おもかげ”と読みます。
ロックバンド「クリープハイプ」のヴォーカル&ギターの尾崎世界観さんの4年半ぶり、初の純文学作品。第164回 芥川賞候補作です。
母影(おもかげ)感想
小学生の女の子の目線で物語は進んでいきます。
シングルマザーであるお母さんの仕事場にしか居場所がない女の子。でも、彼女はその孤独を受け入れています。
お母さん・私・その他登場人物の「人物像」にさほど迫ることなく、なんだかぼんやりしているのですが、それは表題”おもかげ”たる所以なのかな... と思ったりしました。
女の子は「まだ書けない漢字も読むことができる」この表現がとても秀逸...というか、物語を物語っています。
女の子の語り口で物語は静かにするすると進んでいくのですが、終始胸が痛い。
それは私が全部わかっている大人だから?
彼女に同情したから?
いや、それだけでなく...私も幼少期に同じような経験があるからこその胸の痛みかもしれません。
私の母はバツ2。私が小学生の時に2度目の結婚をしたのですが、私が寝ている部屋の襖の奥で”2人目の父”と母の声を聴いたことは、今でも忘れられず鮮明に覚えています。
そんな経験から、なんとなくあの頃の自分を少女に重ね、シクシクと胸が痛んだのだと思います。
少女の目に映る大人の汚らしさ、弱者からの搾取。
でも、今日を母と生きている喜び。
読後、少女を抱きしめたい気持ちになりました。(#尾崎世界観)
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