衝撃のタイトルに惹かれ・・・怖いもの見たさで図書館にて。
だけど、想像していたような恐ろしさは全くなく・・・面白くて睡眠時間を削っての一気読みでした。
七十歳死亡法案、可決 感想
七十歳の誕生日から一か月以内に、日本国民は安楽死させられるという「七十歳死亡法」が施行まであと2年と迫っている。
安楽死の方法は、数種類の中から自由に選べるという優しさ?付き。
この法律が可決された背景には、少子高齢化がある。
年金制度は破綻し、健康保険や福祉の財源も確保できない。
だから、みな70歳で死ぬように法律で決めたという。
そんな法律が決まってからの、姑の介護をしているトヨコを中心とした「宝田家」の人々のお話。
それぞれの気持ちの項があるが、どうしてもトヨコに感情移入してしまう。(年齢的には娘の方が近いんだけれども。)
「あと2年したらお義母さんは死んでくれる・・・」
そう思ってしまうほどに追い詰められているトヨコを、家族の誰1人として救ってくれない。
終盤までは本当に読んでいてイライラする。
引きこもりの息子について、母のトヨコは「息子がこうなったのは、自分が社宅の奥さんたちに馴染めなかったからだ」と自分を責める。
人付き合いが得意ではなかったトヨコは、苦手な愛想笑いも頑張ったし、会えばきちんと挨拶もした。
だけど、どうしても主婦同士の品のない噂話が苦手だった。
そうしているうちに、どの派閥からも空気のように扱われ、その集団に馴染めなかった・・・
・・・う~ん、少し前のわたしだ。
だけど、母親というのは自分が、子供のために、子供を取り巻くコミュニティ全てに”存在感”を発揮して属していなければ不安に思うんだろう。
私は母親になり、一度もそういったコミュニティに属したことがないのだけれど、やはり、「子供のために無理をしてでも、あの輪に混ざった方がいいのだろうか」と思っていたことがある。
そうこうしながら、どこにも何にも属さずに「ママ友0人」でここまできてしまったけれど、そんな私ももう母親歴10年になろうとしている。
そんな今、そんなことは全くもって関係ないんだよと思う。
トヨコにも言ってあげたいと思った。(トヨコは私よりも母親歴はだいぶ長いけれど...)
このぶっ飛んだ法律には、賛成する人、反対する人、行動する人...とさまざまだ。やはり人間って色々だな。
自分だったらどうするだろう。
今の私には(この法律によると)残りの人生は37年。
たっぷりあると感じる。
だけど、トヨコのように50代の後半にもなるとのこされた時間が迫ってくるような恐ろしさがあるだろうなってぼんやりと思う。
生きている限り、必ず訪れる死。
人間のような大型哺乳類は、ある日ぽっくり死ねることは、そう多くないんだと思う。
ということは、程度の差はあれ、誰かの手を借りなければいけなくなる。
だけど、誰だって好んでそうなる訳ではないんだよな...そんな事を想った。
インパクトのあるタイトルとは裏腹に、読後はスッキリ。
でも生きるという事、介護問題など考えさせられる1冊。(#垣谷美雨)