第164回芥川賞受賞作。(2021年本屋大賞ノミネート作品)
どこの本屋さんでも品切れで、手に入れるのに苦労しました。
推し、燃ゆ 感想
私は、40年近いこの人生で一度も「推し」がいたことはない。
いいな~と思う俳優や歌手がいても「いいな~」止まり。
ファンクラブさえも入ったことがない。
なので、この主人公あかりの気持ちが分かるか?と言われれば、まったく分からない。
だけども、自分以外の存在を「推しは命にかかわるからね」と言うメンタリティは少し分かる気もした。
バタバタとたたみかけるような文章が一気に読ませる。
そして、そのバタバタ感があかりの生きづらさをも表しているようで痛みを感じる。
言葉にしづらい感覚を、いとも簡単に言語化しているような表現も魅力的だった。
生きづらさを抱えながら生きるあかりは「とある本の中の人」ではなく、きっとどこにでもいる誰かなんだろう。
だから、あかりの周りの人たちも、どこにでもいる誰か。
私に「推し」がいたことはないが、自分の背骨がちゃんと自分のものになったのは最近かもな、と思う。
若い頃は特に悩み苦しみ、背骨を見つけては自分の体から失って...その骨を拾い「終わった」と心をなだめる。
そしてまた次の背骨を探す。
それは「推し」ではないが、仕事だったり、恋人だったり、家族だったり、思い描く未来だったり。
結局皆、背骨を探しながら...守りながら生きているのかもしれない。
最後あかりは、きちんと綿棒を拾っていた。
骨を拾うようだと思いながら。
だから、きっと大丈夫...私はそう思いたい。(#宇佐見り
ん)
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