著者が52歳の時、ご両親を続けて亡くした時の体験を綴っています。
とある出来事からある日突然、心の準備もなく著者のお母さんは危篤状態になります。
著者(娘)は延命治療は望まないのだけれど、著者よりも長い時間をお母さんと過ごしてきた義娘(兄嫁)は1日でも長くお母さんに生きていてほしいと延命を望みます。
結果、人工呼吸器につなぎ投薬し続ける延命を選ぶのですが...
誰が見てもかわいそうなほど、顔や手足が腫れあがった姿を見て著者は「早く死なせてあげたい」と思います。
きっとこのようなことは少なくないことで、家族の間でも意見が分かれてしまうと大変なんだろうと想像します。
そして、そうやって意見が分かれた場合の多くは「生かす方」を選ばざるを得ないのではないかなぁと思いました。
私も母から「もしもの時は、一切の延命はするな」と言われていますが...
突然そういう時がきて、集まった身内に「母は元気な時にそう言っていました」が通用するかどうかなんて分からない。
だから、母の意思を守るためにもしっかりと書面に残しておかなければと思いました。
そして高齢になっても危篤状態になっても、この国ではなかなか死ねないのだなとも思いました。
著者は「100人いれば100通りの親の送り方がある」と”あとがき”で書いています。きっとその通りで、この本を読んで思うことは人それぞれ。
私とて、すべてを肯定的には読めませんでした。
特に、ご両親が亡くなった3年後に医療過誤で弁護士を立てた後日談にはなんだか微妙な気持ちになりました。
そして、当時のリアルな感情が素直に書かれているので、本に登場する人物がこの本を読んで関係がこじれたりしないのかな...?と少し心配にもなりました。
「親を送る」という経験は、多くの人が1度は経験することだと思います。
その時に、自分以外の誰かがどのように親を送り、
その時にどんな気持ちだったかを知れるというのはとても心強いことだと思いました。
この本を読んでおいたことが私の”その時”に何かしらの意味を持つかもしれない、と。
私も親。だから...私の娘も、私や夫を見送る日が来ます。
その時のために大切なことや自分の希望はしっかりと伝え、お金もちゃんと残してやりたいと強く思いました。(#井上理津
子)