わたし、シーズン2

読書が趣味の40代主婦。きままな読書感想文を中心に日常を綴っています。家族は、夫と娘と元保護犬の愛犬ミィ。

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『一生役に立つ しんどくならない「ひとり暮らし」ハンドブック』楽しみでもあり不安でもある”初めての一人暮らし”の入門書

先日ご報告させていただいたのですが、この春から娘が大学生になりました。

 

県外の大学に進学したので、同時に一人暮らしをすることに。

 

今までしっかり育ててきたつもりではあるけれど、まだ19歳。

 

親元を離れたら...思わぬことで困ったり、甘い誘惑、危険なこと、危険な人との出会いもあるかもしれません。

 

そこで、本屋さんで出会ったこの本を買ってみました。

 

一生役に立つ しんどくならない「ひとり暮らし」ハンドブック 感想

住まい・食・身だしなみ・お金・防犯・人間関係・メンタルケアの項目に分かれて書かれています。

 

初めて一人暮らしをする人に寄り添うような内容で、イラストもかわいらしくとても読みやすいと思いました。

 

 

私が特にいいなと思ったところは、実際の時期ごとや経験談をもとに作られているところ。

 

特に防犯のページは実際にあった事件の事例が載っているので、私自身もとても勉強になりました。

 

人間関係のページでは友人関係はもちろん、異性関係や性的合意のことも書かれていて、望まない妊娠を防ぐことや万が一DVにあった時の相談サイトも載っています。

 

若さゆえ、親に言われてもなかなか響かないかもしれないことも、こうやって読み物になっているとスッと受け入れられるかもしれないな~と思いました。

 

 

私はこの本に加えて、宗教勧誘の具体例を話したり、信頼できる人以外との食事では飲み物を残して席を離れないなどを話しました。

 

一人暮らしはとても自由で楽しい。

 

でも慣れない環境で、今まで親がしていた生活全般のことを自分1人でこなさなければいけない大変さもあるし、口うるさくも見守っていた親の目も届きません。

 

家事が多少できないくらいは構いませんが、やはり自分の身は自分でしっかり守らないといけないことを繰り返し伝えていかないといけないなと思います。

 

この本と2冊の料理本を渡し「私たち親はいつでも味方だから、辛い時はいつでも帰っておいで」と言って娘を送り出しました。

 

* この本の感想を書きました *

 

『ハグとナガラ』どこでもいい。いつでもいい。 一緒に行こう。旅に出よう!

ほかの短編集に収録されていた作品や、文芸誌で発表されたものをひとつにした文庫オリジナルの全6話の短編連作集です。(第一話の「旅をあきらめた友と、その母への手紙」は『さいはての彼女』に収録されています。)

 

解説は阿川佐和子さん。

 

旅を舞台にした人間ドラマなのですが、作者の原田マハさんにも旅友がいるそうで、実際にマハさんが巡った旅先を舞台にしたフィクション。

 

旅友と過ごしたなかで感じ取ったことを、小説に落とし込んでいるそうです。

 

マハさんを思わせるような女性が笑いながら、女友だちと空を見上げる装丁がとても印象的な文庫本です。

 

ハグとナガラ 感想

主人公ハグは独身のバリキャリ女性。

 

30代に差し掛かり、付き合っていた彼と結婚し子供に恵まれ、夫婦でバリバリ働いて....と思い描いていたものの人生そんなに思い通りにはいかず挫折を経験。

 

そんな時に大学の友人だったナガラに誘われて、女2人旅を楽しむようになります。

 

その旅は日常の疲れを癒してくれるとともに、次の旅まで頑張ろう!という活力も与えてくれます。

 

 

長い間、結構ハイペースで旅を楽しむ2人でしたが、自分たちが年を重ねるとともに親も高齢になり.....苦悩したりイライラしたり、自己嫌悪を感じてみたり。

 

そんな時に救ってくれたのも、旅と友でした。

 

 

 

読後はさわやか。薄めの文庫本なので移動にもおすすめです。

 

とにかく旅に出たくなる本なので、私は飛行機での移動中に読んだのですが......不覚にも涙が溢れてしばらく止まらなくなってしまいましたのでご注意を。

 

長く生きていてもいなくても、人生思い通りになんてならないことの方が多い。

 

だけど.....

 

「人生を、もっと足掻こう。」

(#原田マハ)

* この本の感想を書きました *

『主婦病』夫婦や家庭の中に潜む孤独と闇

本屋さんで、タイトルがなんとな~く目に留まり購入。

 

収録されている「まばたきがスイッチ」は、第12回女による女のためのR-18文学賞読者賞受賞作品です。(故に性表現が多めです。)

 

主婦病 感想

”主婦”が主人公の6話連作短編集。

 

タイトル買いしたので、主婦独特の生活や苦悩が描かれた物語かな...?と思っていたけれど全く違った...というか、対局にあるようなお話でした。

 

著者がどういう意図でタイトルを「主婦病」にしたのかは分からないけれど、20年主婦である私は、この内容でこのタイトルというのはなんだかいい気持ちはしないというか、とても安っぽい「主婦感」を感じてしまいました。

 

主婦って満たされない思いを抱えながら小さな小さな世界で生きているよね、いつまでも”女”を捨てられないなんてこと言いながらさ...みたいな感じ。

 

 

連作短編らしく少しずつお話がリンクしている感じや、滲み出る狂気、クリアな映像が浮かんでくるような表現はとても好きでした...が、登場人物の誰のことも理解はできないかな。

 

いつまでも”女”を軸にして、鬱々としたジメジメした思いを抱えながら生活している人は、もしかしたら共感できるのかも...?

 

 

昔の団地の夕暮れのような物悲しさと、どこか古ぼけた印象の作品でした。

(#森美樹)

* この本の感想を書きました *

『プリズン・ドクター』塀の向こうで奮闘する日々を綴ったエッセイ

テレビのコメンテーターでもおなじみの医師、おおたわ史絵さん。

 

華やかな女性医師...きっと多くの方が彼女に抱いているであろう印象。

 

例にもれず私もそう思っていました。

 

しかし『母を捨てるということ』で彼女の過去を知り、彼女に対する印象がガラッと変わることになります。

 

 

 

お母さんが薬物中毒だったことを綴った『母を捨てるということ』を読んで、彼女の苦悩を初めて知りました。

 

プリズン・ドクター感想

職業:法務省矯正局医師

 

そんな帯を見て「なんで刑務所...?」と思い、手に取ったのがこの本との出会いである。

 

本書の最初の章には、医師人生を振り返りつつなぜ刑務所で働くことになったのか書かれているが、本当にひょんなことから。

 

でも「自分はどうして医師になったのか、残りの人生何が出来るのか」という自問自答の中で偶然この仕事に出会い、薬物中毒で繰り返し刑務所に戻ってきてしまう受刑者に母親を重ね、そういう人たちと医者として関わっていくことができれば、母親の問題を抱えながら医者を辞めずに続けてきたことにとても意味があると感じていく。

 

私も読みながら、この方の天職なのではないかと勝手ながら思う。

 

 

 

 

罪人なんだから、医療なんて受けるな!図々しい!

 

 

もし私や家族が犯罪被害者だったら、間違いなくそう思うと思う。

 

おおたわ先生も、確かに被害者の気持ち気持ちを考えたら耐え難い気持ちになる、とした上で

 

「現代の刑務所は罪人を閉じ込めて懲らしめるところではなく、犯した罪に対して懲役という労働をするところなのである。(中略)もし病気が悪化して寝たきりになったら、働けないどころか医療費も生活費も税金から賄うことになるでしょう?それじゃ余計に国民のお荷物になってしまうではないか。」

 

と書かれている。そっかー・・・確かに。

 

死刑や無期懲役などの受刑者より窃盗や薬物など、また社会に出てくる受刑者の方が圧倒的に多いわけで。

 

そんな受刑者の病気を刑務所で放置したことで、悪化したまま出所してしまえば、結局シャバでもっと高額な医療費を使うことになるかもしれない。

 

そう考えると、受刑者の最低限の心身の健康の管理を刑務所内でせするというのは、結局回りまわって世の中のためになる...のかもしれない。

 

 

 

あと...ケーキの切れない非行少年たちにも書かれていたけれど、境界知能や精神疾患・発達障害に虐待...犯罪を犯す人がすべてそうだという訳ではないけれど、犯罪とは切っても切れない問題だと思う。

 

どうしても差別!と騒ぐ層がいるのでタブー視されているが、こういった問題をもっとオープンにして社会全体で考えないといけないのではないかなと思った。

 

 

多くの人が知ることのない刑務所でのエピソードの他、彼女の新しい取り組みなどがとても読みやすく書かれている。

 

たくさんの方の目に留まればいいな...と思う良書だった。(#おおたわ史絵)

 

* この本の感想を書きました *

『母影(おもかげ)』私は少女を抱きしめてあげたい

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「母影」と書いて”おもかげ”と読みます。

 

ロックバンド「クリープハイプ」のヴォーカル&ギターの尾崎世界観さんの4年半ぶり、初の純文学作品。第164回 芥川賞候補作です。

 

母影(おもかげ)感想

小学生の女の子の目線で物語は進んでいきます。

 

シングルマザーであるお母さんの仕事場にしか居場所がない女の子。でも、彼女はその孤独を受け入れています。

 

お母さん・私・その他登場人物の「人物像」にさほど迫ることなく、なんだかぼんやりしているのですが、それは表題”おもかげ”たる所以なのかな... と思ったりしました。

 

女の子は「まだ書けない漢字も読むことができる」この表現がとても秀逸...というか、物語を物語っています。

 

 

 

女の子の語り口で物語は静かにするすると進んでいくのですが、終始胸が痛い。

 

それは私が全部わかっている大人だから?

 

彼女に同情したから?

 

いや、それだけでなく...私も幼少期に同じような経験があるからこその胸の痛みかもしれません。

 

 

私の母はバツ2。私が小学生の時に2度目の結婚をしたのですが、私が寝ている部屋の襖の奥で”2人目の父”と母の声を聴いたことは、今でも忘れられず鮮明に覚えています。

 

そんな経験から、なんとなくあの頃の自分を少女に重ね、シクシクと胸が痛んだのだと思います。

 

少女の目に映る大人の汚らしさ、弱者からの搾取。

 

でも、今日を母と生きている喜び。

 

読後、少女を抱きしめたい気持ちになりました。(#尾崎世界観)

 

* この本の感想を書きました *

『47都道府県 女ひとりで行ってみよう』飾らない一人旅のススメ

 

昨年、人生初の長期一人旅に出かけた私。

 

*アラフォー女子 はじめての一人旅

 

高速バスや夜行バスに鉄道と、移動時間が長かった今回の一人旅のお供に選んだ本です。

 

完全にタイトル買いです。

 

47都道府県 女ひとりで行ってみよう 感想

イラストレーターの益田ミリさんによる旅行エッセイです。

 

2008年に出版され文庫化は2011年。

 

現在は2023年ですから、結構前の本ですよね。

 

なので情報が古かったり、表現が今の時代にはミスマッチ感はあります。

 

 

 

毎月1県ずつ一人旅に行って、各県4ページほどにまとめられています。

 

京都→大阪→兵庫みたいなことはせず、毎月東京(または実家)から1県ずつ。

 

正直めちゃくちゃ効率悪いし、もったいないなぁ...と思いましたが、それが著者が決めたルールになっています。

 

 

っとまぁ簡単に説明しましたが、実はこれがなかなかの問題作...というか賛否両論が分かれる作品になっています。

 

その理由は...とにかく愚痴や文句が多い。

 

下調べもせず行きたいところに行けなかったり、名物だからと好きじゃないものを頼んでやっぱり好きじゃなくて残したり。

 

あまりの文句の多さに、自分の住んでいる県はなんて言われるんだろうと怖くなったりしました。(実際私の住む県は、まぁまぁ気に入っていただけたようでホッとしたりしました。)

 

私は今から京都にいくぞー!とワクワクした気持ちで読み始めましたが...およよ?という感じで、途中あまりにも嫌な感じがして読むのやめようかな...とも思いました。

 

まぁでもせっかく買ったしな~と共に旅を進めていると、次第にハッとしたというか。

 

これは旅行記でもなく、ガイドブックでもなく、一緒に旅行気分を味わったりする本でもなく「単に独身女性が47都道府県に女ひとりでいってみた」なのだと気づきました。

 

そう、旅はそれぞれ!楽しみ方や過ごし方は100人いれば100通り!自分の旅は自分が良ければそれでいいんだ!と。

 

それこそが一人旅の醍醐味だよな~、と思うと一気に読んでしまいました。

 

 

 

この本では有名な名所にほとんど行ったりしないし、ご当地の物もあまり食べません。旅先での感動や心温まる出来事もありません。

 

なので、旅慣れた人やガイドブックに載っている場所をしっかり楽しみたい人、その土地の名物を味わいたい人には全くお勧めしません。

 

この本を読んで「うわぁ~一人旅って素敵☆」ともなりません。

 

ただ、一人旅ってハードルが高いと思っている方や、逆にキラキラ旅行は無理って思っている方には、こんなにゆるーくてもいいんだ!旅って自由だ!と思わせてくれる本だと思います。

 

1県4ページというのもとても読みやすいと思います。

 

本を読み終わり、はじめての一人旅を終えた私も47都道府県制覇したいな~と思っています。(益田ミリ)

 

* この本の感想を書きました *

イライラするのに「永田カビ」という人から目が離せない

 

今までに2冊「永田カビ」さんのコミックエッセイの感想文を書きました。

 check さびしすぎてレズ風俗に行きました

現実逃避してたらボロボロになった話

 

そして今回、以下を追加で読みました。

 

 

 

 

 

 

これらのまとめてのレビューとして、今回は著者の「永田カビ」さんについて書きたいと思います。

 

私は、イライラするのに「永田カビ」という人から目が離せない

私は彼女の作品を読むたびに思うことがあります。

 

なんでこんなにメンヘラなの?

 

なんでこんなにグズグズするの?

 

いつまで全てを親のせいにするの?

 

とにかく、終始イライラします。

 

 

だから「私とは違う世界で生きている人」と、わざと心の中で線引きをするのに....必ず心にグサッグサッと刺さってくるのです。

 

そして気づきます。

 

「あぁ...もし自分の頭の中のことを全てを文字にすると、みんなこんな風に人をイライラさせるのかもしれない」と。

 

だって、人なんてみんな自分のことが1番だもの。

 

 

 

私を含め多くの人は、自分の心の中をいちいち文字や絵にして人に見せたりしないけど、もし彼女のように素直に心の中を文字にしてさらけ出したら、私だって絶対ヤベェ奴だろうな...なんて真剣に思うのですよ。

 

 

そして、彼女のように依存症やADHDでなくても生きづらさも罪悪感も寂しさも感じることは誰でもあって。

 

でも、これまた私を含め多くの人は、自分の心の中の「そういうもの」に気づかないふりしたり、他に楽しみを見つけたり、開き直ったりしてやりすごしてると思うの。

 

もし、私も彼女のように自分の心の奥の気持ちをスルーせず、ごまかさず、真正面に向き合い掘り下げたとしたら....こんな感じになっちゃうのかもしれない。

 

 

そんなことを考えながら読み進めると...あまりにも人に迷惑を掛けてる様子に「やっぱりこの人、どうしようもねえな...」とドン引きし、やっぱり私はこの人のことを理解できないって思うのです。

 

なのに読み終えると、とにかくナナメ上の行動力にちょっと羨ましさを感じたり、バタバタと見苦しくもがきながらも一生懸命生きている彼女に眩しさも感じたりして、とにかく心をぐらんぐらんと揺さくられます。

 

 

 

イライラする...のに、目が離せない。

 

私はきっと彼女を応援している。

 

 

自分を俯瞰で見つめる能力が高い彼女が生み出す言葉は実にリアルで、よく研がれた刃物のように突き刺さります。

 

アルコール依存症を克服して、これからもその刃物を武器に書き続けて欲しいと思います。(#永田カビ)

『わたしは家族がわからない』普通とは?家族とは...?

「普通がいちばん」が口癖の妻、公務員の真面目な夫、ごくごく普通の娘の3人家族。

 

平凡に暮らしていたのに...突然1週間の夫の失踪そして、夫の秘密。

 

妻・夫・子の3人それぞれの視点で描かれたコミックです。

 

著者自身の実話ではなさそうですし、設定上少し無理がある部分もあります。

 

が、考えさせられる部分が結構あるな...と思いました。

 

『わたしは家族がわからない』 感想

結論から言いますが...結果的に、この夫は妻と子供を捨てます。

 

描かれている部分に、妻にも子供にも特に悪い部分はありません。

 

 

夫婦が本音でぶつかりあい、もっと「普通」の生活に感謝して生活していれば...と思う方もいるかもしれませんが、実際日々の生活なんてあわただしく過ぎていく。そんな理想の生活はなかなか難しいものです。

 

そして妻が、波風の立たない平和な日々を望むことはとても理解できます。

 

反対に、夫が失踪した理由をまったく理解できないし、共感もできません。

 

 

 

でもこの本を読んで、知り合いの男性2人(共に30代)が結婚後に妻と子供を置いて、数回失踪を繰り返したことを思い出しました。(のちに2人とも離婚)

 

偶然なのかなんなのか分かりませんが、2人とも全く同じ「なんとなく今の”すべて”が嫌になった」という理由でした。

 

そして私自身も30代の頃、急に夫が「なんとなく今の”すべて”が嫌になったから別々に暮らしたい」と言い始めたことで、大きな離婚危機になったことがありました。(私の夫は失踪はしませんでしたが。)

 

 

っつーか、なんなん?30代既婚男性、勝手すぎん?

 

 

この登場人物3人(私の夫・高校の同級生・友人の夫)とも、妻が子育て・仕事・家事に追われる中で喧嘩が増えた、仕事で嫌なことが続いた、家族が息苦しくなった、そしてなんとなく全てを投げ出してリセットしたかった....そんな感じ。(時間が経って冷静に考えると....もしかしたら、優しくしてくれる”イイ女”がいたのかもしれないですね。)

 

そういう人の方がもちろん少ないとは思うけれど...友達の少ない私が夫を含め3人も、身近で似たようなことがあったということは、案外そんな自分勝手な理由で家族を捨ててしまう人もいるのかもしれません。

 

 

普通に暮らしたくても、自分の家族を守りたくても、家族に1人でも”そうじゃない人”がいれば「家族」なんて簡単に壊れてしまう...そんなことを思いました。

(#やまもとりえ)

* この本の感想を書きました *
 

『 噛みあわない会話と、ある過去について』胸がざわざわする心理的ホラー

噛みあわない会話と、ある過去について 感想

4話からなる短編集。

 

誰だって1つや2つあるであろう「現実と記憶の相違」。

 

それが自分の中だけでのことならば、さほど問題でないけれど...相手がいることだったら、こんな感じになっちゃうよなぁ...という感じ。

 

多くの人は、後に「答え合わせ」をしないから実際にこのようなことが出来事として起こらないけれど、この本を読むことで過去の自分の言動を強制的に思い返さなければいけなくなります。

 

 

 

私自身、小学校の頃の同級生と話す機会などがあると、一人一人の記憶力の差にとても驚くことがあります。

 

私は学生時代の事はあまり覚えていないんだけれど、中には小学校時代の小さな出来事の詳細やその時の会話なども覚えている子もいて。

 

別になんてことないことでも「あの時、スティンキーちゃんってこう言ってたよね」とか言われると正直、恐怖でしかない。怖っ!って思ってしまう。

 

だって、それが真実かどうかなんて分からないから。

 

 

だからこの本の中の出来事も、でも責めてる側が言ってることが本当に全部正しいのか?とも思いました。

 

まさにそれが、この本の怖さ。

 

 

「起こった出来事」は皆同じだとしても、受け取り方や解釈・感情って本当に人それぞれ。

 

だからこそ、意図せず(悪意なく)人を傷つけたり、自分もそれで傷ついたりするのはある程度はしょうがない....と私は思っても、みんながそう思えるわけではないのよね。

 

例え悪意のない言動だとしても、人の恨みを買うことだってある。

 

人間関係って本当に難しい。口は災いの元だよなぁ。

 

 

 

あなたの過去は大丈夫ですか...?

 

 

 

と問われているような作品でした。

(#辻村深月)

* この本の感想を書きました *

『 漫画ペスト』いつの時代も変わらないパンデミックを描く

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1947年に出版されたアルベール カミュの小説の漫画版です。

 

原作は難しいと聞いたことがあるので漫画版を購入したのですが...漫画版でも少し難しい。

 

難しいというか「読み取る力」が必要だと感じました。(きっと、長編小説を短い漫画にまとめているため、そう感じたのだと思います。)

 

漫画ペスト 感想

アルジェリアのオラン市で突如発生した謎の伝染病。

 

どんどん増えていく犠牲者。最初はその死者は「数」だったけれど、だんだんと身近の人々が亡くなり、病気が自分に近づいてくる恐怖。

 

港や町は閉鎖され、一時的にこの街に滞在していた人たちも閉じ込められてしまう。

 

70年以上前に書かれたとは思えないほど、現在の新型コロナウィルスのパンデミックとよく似ています。

 

第一線で治療にあたる医師たち、「ペスト」であることを公表するのをためらう政治家や医師会(のようなもの)、デマに振り回されたり、暴動を起こす輩、それでも助け合い乗り越えようとする人々...いつの時代も全く変わらない。

 

目の前で亡くなっていく患者を見て、自分たちは何もコントロールできない、人生の不条理は避けられないと思いながらも、第一線で病と戦う医師の姿も...きっと変わらない。本当に尊敬に値する姿だと感じました。

 

 

漫画版では「現代→原作の漫画家→現代」という構成になっているのですが、個人的には現代部分は不要だと感じました。

 

小説から様々な事柄がカットされているので、原作の代わりに読むというよりは、ノーベル賞受賞作家の名著のあらすじを漫画で読める、という感じです。

 

 

 

最近ではコロナの流行も落ち着き、少し以前の日常を取り戻しつつある...と私は感じているのですが、

 

このコロナに対する感覚は本当に人それぞれで、私を担当してくれている美容師さんの息子さんは、コロナノイローゼのようになっているそうです。

 

高校生なのですが、コロナが心配で学校に行きたくないと言い始め...なんとかなだめていかせているそうですが、感染が怖くて公共交通機関に乗れないので毎日親が車で送迎しています。

 

その送迎中の車も窓を全開にして、その横をマスクせずに自転車に乗っている人が通ったら

 

「あの人がコロナだったら、俺感染したかも...」

 

と本気で悩み、毎日20枚近くのマスクを消費しているそうです。

 

そして、そんな毎日を送っていると最近ではコロナ以外の様々なことにも不安を感じ始めたそうです。

 

忘れ物や家の鍵や電気を消したかなど、何度も何度も確認するそうで...親である美容師さんも心配していました。

 

 

様々なところにたくさんの影響を与えてしまったパンデミック。

 

『ペスト』のように、このまま収束していってくれたらいいな...と本当に思います。

 

* この本の感想を書きました *

 

原作(翻訳)はこちら...